システム比較表|勤怠・労務はジョブカン・KING OF TIME・SmartHRの違いと導入費用
システム比較表をお探しの方へ。この記事では、勤怠・労務の主要クラウドであるジョブカン、KING OF TIME、SmartHRを、機能・連携・セキュリティ・料金・導入費用まで横断比較します。勤怠管理・シフト・休暇管理・36協定・打刻・承認フロー、労務管理・入社手続き・マイナンバー・電子申請・年末調整、給与ソフト連携とCSV、API連携とWebhook、SSOとSAML、ISMSやSOC2、二要素認証やIP制限、バックアップまでをシステム比較表で整理。導入期間や運用のしやすさ、サポート・導入支援、乗り換えとデータ移行、料金プラン・初期費用・月額、トライアル、業種別の導入事例とユースケース(製造・小売・医療、リモートワーク・フレックス)も網羅します。結論の要旨は、打刻運用が複雑で多拠点ならKING OF TIME、労務手続と年末調整の一体運用を重視するならSmartHR、費用対効果と勤怠の基本機能を重視するならジョブカンが有力。最終的には、企業規模・従業員数・就業規則と運用フロー、セキュリティ要件を比較指標で可視化し、選び方チェックリストで優先順位づけすることで、最適解にたどり着けます。
1. システム比較表の前提と選定基準
本章では、勤怠・労務分野の主要クラウド(SaaS)である「ジョブカン」「KING OF TIME」「SmartHR」を対象に、比較表を正しく読み解くための前提と、導入判断を誤らないための選定基準を明確化します。対象機能の境界、比較に用いる条件、企業規模別の評価観点、そして各指標の定義・測定方法を事前にそろえることで、価格や機能差だけでなく運用コストやガバナンスまで含めた総合評価(TCO/リスク/将来拡張)を可能にします。
1.1 対象範囲と比較条件
本記事の比較対象は、日本国内で広く導入実績のあるクラウド型の勤怠・労務サービスで、従業員の打刻から申請・承認、入社手続き、社会保険・雇用保険の電子申請、年末調整、マイナンバー管理、各種連携(給与ソフト連携、CSV出力、API/Webhook、SSO/SAML)およびセキュリティ(ISMS、SOC 2、二要素認証、IP制限、データ保管とバックアップ)に関する公開情報を基準に評価します。なお、ベンダーごとに「勤怠領域」と「労務領域」の提供範囲が異なるため、該当機能がネイティブ提供されない場合は「外部連携での代替可否」も評価対象に含めます。
| 比較対象領域 | 含まれる主な機能 | 評価観点(例) | 注意点・補足 |
|---|---|---|---|
| 勤怠管理 | 出退勤打刻、打刻修正、シフト/勤務表、残業アラート、36協定対応、休暇管理/有給付与 | 設定柔軟性、残業/深夜/休日自動計算精度、打刻方法(IC/生体/モバイル/PC/LINE等)、承認フロー | シフト制・裁量労働・フレックス・変形労働への対応可否を明確化 |
| 労務手続き | 入社手続き、雇用契約の電子化、社会保険手続き、マイナンバー収集/保管、年末調整 | 電子申請対応範囲、帳票カバレッジ、本人・管理者UX、改定法令への追随性 | マイナンバーのアクセス制御・保管・廃棄と監査証跡の有無を重視 |
| 連携/エコシステム | 給与ソフト連携、CSV出力、API、Webhook、SSO(SAML/OIDC)、ユーザー自動プロビジョニング(SCIM) | 連携範囲と安定性、標準コネクタの有無、拡張性、ノーコード連携の使い勝手 | 外部ID基盤(Azure AD/Google Workspace/Okta等)との親和性を確認 |
| セキュリティ/コンプライアンス | ISMS(ISO/IEC 27001)、SOC 2、二要素認証、IP制限、ログ/監査証跡、バックアップとDR | 認証・認可の粒度、データ保管の冗長性、可用性/SLA、権限設計の実務適合性 | 36協定管理、労働基準法対応、個人情報/マイナンバー保護要件との整合を確認 |
比較の公平性を担保するため、以下の運用前提を既定します。これにより「環境の違いによる評価のブレ」を低減します。
| 前提変数 | 標準想定 | 補足説明 |
|---|---|---|
| 運用環境 | クラウドSaaS最新版、スマートフォン/PC併用、主要ブラウザ現行版 | アプリ/ブラウザ双方の主要機能可用性を確認 |
| 就業制度 | 所定労働(9-18時)+シフト制部門併存、残業発生、休日/深夜あり | フレックス、変形労働、在宅勤務を含むユースケースで検証 |
| 打刻方式 | ICカード/生体/モバイルGPS/PCブラウザの併用 | 不正打刻抑止、オフライン、位置情報の運用方針を評価 |
| 承認フロー | 多段承認(現場→部門→人事/総務)、代行承認あり | 例外対応・差戻し・一括承認・休日承認の可用性 |
| セキュリティ要件 | MFA必須、IP制限あり、SSO(SAML/OIDC)利用 | 権限ロールの粒度、監査ログの保持期間/エクスポート |
| データ連携 | 給与ソフト連携+CSV出力、API/Webhookでの自動化 | 人事マスタ同期(SCIM等)とエラー監視の設計 |
価格・機能・連携仕様・セキュリティ認証は変更され得るため、最終判断時は必ず各社の最新の公式情報で裏取りしてください。本記事の比較は、一般的な運用を想定した標準条件での評価方針を示すもので、個別要件(システム連携の深さや業界固有の規制)に応じて重み付けを調整することを前提とします。
1.2 企業規模と従業員数の目安
勤怠・労務システムは、従業員規模や拠点数、雇用形態の多様性に応じて求められる要件が大きく変化します。以下の目安は調達・比較時の優先度設計に有用で、導入後の運用負荷やガバナンス強度にも直結します。
| 規模の目安 | 典型的な要件 | 評価を重視すべき観点 | 運用の勘所 |
|---|---|---|---|
| 小規模(〜100名程度) | 基本勤怠と休暇管理、簡易ワークフロー、給与連携、シンプルな権限 | 導入スピード、使いやすさ、初期費用の抑制、テンプレートの充実 | 管理者の専任化が難しいため、設定の平易さとサポートの即応性が鍵 |
| 中堅(100〜999名程度) | 多拠点・シフト混在、例外規則、複数承認、API連携、MFA/SSO | 設定柔軟性、拡張性、連携の安定性、監査ログ、運用自動化 | 人事・情報システムの分業を前提に、権限設計と変更管理プロセスを明確化 |
| 大規模(1,000名〜) | 複雑な就業制度、BCP/DR、詳細な権限・監査、SLA、変更影響評価 | 可用性とSLA、セキュリティ認証(ISMS/SOC 2)、データ保全と保管ポリシー | 段階導入・並行稼働・データ移行計画と、研修/チェンジマネジメントが必須 |
| 多拠点・交代勤務中心 | 大規模シフト、打刻端末の冗長化、残業アラート、36協定遵守 | 打刻安定性、シフト自動作成、欠員アラート、実績と給与の突合 | 現場負荷低減と不正打刻抑止の両立(生体/IC/GPS、IP制限の設計) |
| リモート・フレックス比率高 | モバイル打刻、在宅勤務申請、フレックス清算、有給/代休の可視化 | モバイルUX、位置情報の取扱い、ワークフローの柔軟性、通知設計 | 本人・管理職・人事のダッシュボード整備と、運用ルールの周知徹底 |
規模はあくまで目安であり、雇用形態の多様性や拠点構成、既存システムとの連携要件によって優先順位は変わります。特に中堅以上では、導入期間・移行コスト・教育コストをTCOとして一体で評価するのが実務的です。
1.3 比較指標の定義
比較表の各項目は、名称の印象ではなく、業務適合性・運用容易性・統制・コストに直結する観点で定義します。以下の指標は、購買・人事労務・情報システム・現場管理職の合意形成を促すための共通言語として整理したものです。
| 指標 | 定義 | 測定・確認方法の例 | 補足/典型ユースケース |
|---|---|---|---|
| 機能充足度 | 要件に対する標準機能の網羅性(勤怠/シフト/休暇/36協定/打刻/労務/電子申請/年末調整等) | 要件マトリクスへの○/△/×、仕様書・管理画面での確認 | 不足は外部連携や運用で補う場合の影響を試算 |
| 設定柔軟性 | 就業規則や例外運用を無理なく表現できる度合い | 複数勤務区分/残業丸め/休暇付与条件/変形労働の再現テスト | 将来の制度改定への追随コストを低減 |
| UX/操作性 | 従業員・管理者・人事の各画面の見やすさと操作負担 | 主要タスクのクリック数/所要時間、モバイルとPCの実測 | 申請漏れ/入力ミス削減、現場の定着率に直結 |
| 導入期間 | 要件定義〜設定〜試験〜教育〜本番のリードタイム | 標準テンプレート適用の可否、並行稼働の要否 | 繁忙期回避や給与締めスケジュールとの整合が重要 |
| 運用負荷 | 月次/日次のメンテナンス、問合せ対応、例外処理の工数 | 自動化(ルール/リマインド/Webhook)と一括操作の有無 | 人事・労務の残業抑制と属人化解消に寄与 |
| 連携性 | 給与ソフト連携、CSV出力整形、API、Webhook、SSO/SAML、SCIMの対応 | 標準コネクタの有無、APIの権限/スループット、エラーハンドリング | 人事マスタ同期、Slack/Teams通知、データ基盤連携の実現性 |
| セキュリティ/ガバナンス | ISMSやSOC 2等の枠組み、MFA、IP制限、監査証跡、バックアップ/DR | 第三者認証の有無、ログの保持期間/検索性/エクスポート | マイナンバー/個人情報のアクセス制御、退職者の権限剥奪の確実性 |
| 可用性/SLA | サービス稼働率、計画メンテの通知、BCP体制 | 公開SLA・障害報告、冗長化とRTO/RPOの情報 | 給与締め前後のピーク耐性を重視 |
| 監査対応 | 証跡・権限変更履歴・設定差分の取得性 | 監査ログの範囲/保持、レポート自動化 | 内部統制/J-SOXやISMS運用に必須 |
| サポート/導入支援 | 問い合わせチャネル、応答速度、ナレッジ、伴走支援の有無 | SLA/受付時間、初期設定支援・研修・データ移行支援の範囲 | 多拠点・複雑制度には専門家支援が効果的 |
| コスト構造/TCO | 初期費用、月額、オプション、打刻機器、運用・教育の隠れコスト | 3〜5年の総額、機器更新、人件費換算、解約/乗り換えコスト | 値引きより運用自動化による実コスト削減を評価 |
| データポータビリティ | エクスポート粒度、API取得範囲、バックアップ取得の可否 | CSV/APIでの完全性、スキーマ公開の有無 | 将来の乗り換えやデータ利活用に影響 |
| 変更容易性 | 制度改定・拠点追加・人事制度変更時の設定変更の容易さ | 設定のバージョン管理、テスト環境の有無 | 毎年の法改正や組織再編に耐える設計かを確認 |
上記指標は「何をもって優劣とするか」を組織内で合意するための基準です。実査では、要件一覧と評価観点を突き合わせ、必須/重要/許容の優先度を付与し、差異が運用やコストに与える影響まで定量化することを推奨します。
2. 勤怠と労務のシステム比較表
ジョブカン(勤怠管理/労務HR)、KING OF TIME、SmartHR(勤怠/人事労務)の3サービスについて、勤怠・労務の主要機能、連携、セキュリティの観点で比較します。ここでは「実運用での網羅性」「法令対応(労基法・36協定・マイナンバー)」「他システム連携のしやすさ」を軸に、選定時の判断材料となる相違点を整理します。
2.1 機能比較
2.1.1 勤怠管理とシフト管理
勤務形態の多様化(固定時間、フレックスタイム、変形労働時間制、シフト制)に対する柔軟さや、シフト作成・配布・変更の運用コストは製品選定に直結します。以下はカバー範囲の比較です。
| 項目 | ジョブカン | KING OF TIME | SmartHR |
|---|---|---|---|
| 勤務形態(固定/フレックス/変形) | 多様な就業ルールを設定可能。法定労働時間やみなし労働の計算に対応。 | 就業ルールの細分化に強み。集計条件の細かな調整がしやすい。 | 基本的な勤務形態に対応。シンプルな設定で早期運用開始に向く。 |
| シフト作成・自動割当 | シフト作成/公開/募集に対応。店舗・拠点単位の運用に親和的。 | シフト作成・調整が強力。大人数・多拠点でも運用しやすい設計。 | シフト作成は基本機能中心。複雑要件は連携活用が前提になりやすい。 |
| ダッシュボード・可視化 | 出勤・残業状況をリアルタイム表示。アラートとの併用で未承認を抑制。 | 稼働分析・工数把握に強い。勤怠データの深掘りがしやすい。 | 必要情報を簡潔に表示。人事・労務の情報と見通しよく連携。 |
複雑シフト・多店舗なら「KING OF TIME」、汎用性と導入のしやすさのバランスなら「ジョブカン」、人事・労務との一体運用重視なら「SmartHR」が目安です。
2.1.2 休暇管理と有給付与
年次有給休暇の自動付与や時間単位年休、代休・振休などの運用は、法令順守と現場負担の軽減に直結します。
| 項目 | ジョブカン | KING OF TIME | SmartHR |
|---|---|---|---|
| 有給付与(自動計算) | 入社日・基準日に基づき自動付与。付与テーブルの柔軟な設定が可能。 | 勤続年数・出勤率に応じた自動付与に対応。付与履歴の監査性が高い。 | 基本的な自動付与に対応。人事データとの一元管理で実務を効率化。 |
| 時間単位年休・半休 | 半休・時間単位に対応。残数管理も標準的。 | 半休・時間単位に対応。月次の残数アラートが運用を補助。 | 半休・時間単位に対応。申請ワークフローと連動しやすい。 |
| 代休/振休 | 代休・振休の自動発生ルール設定に対応。 | 休日出勤からの代休付与を柔軟に設定可能。 | 基本的な運用に対応。複雑要件は他機能との組み合わせで対応。 |
休暇残高の可視化・セルフサービスを整えることで、総務・人事の問い合わせ対応を大幅に削減できます。
2.1.3 36協定と残業アラート
36協定の上限管理は、月次・年次の超過リスクを事前に察知できる仕組みが重要です。
| 項目 | ジョブカン | KING OF TIME | SmartHR |
|---|---|---|---|
| 36協定上限チェック | 月次・年次の上限を警告。部署・個人単位でのモニタリングに対応。 | アラートの閾値を細かく設定可能。管理画面でリスクの早期把握に強い。 | 上限超過の予兆を可視化。シンプルな警告設計で運用を定着させやすい。 |
| 超過アラート・通知 | 本人・上長・管理者へメール通知等。承認フローと連動。 | 通知先・条件の柔軟設定が可能。ダッシュボードと連携。 | 必要最小限の通知を標準提供。設定負荷が軽い。 |
「未承認の放置を作らない仕組み(アラート+承認フロー+ダッシュボード)」が法令順守と工数削減の鍵です。
2.1.4 打刻方法と打刻修正
打刻の信頼性・利便性は、出退勤データの正確性に直結します。現場の運用に合わせた多様な打刻手段がポイントです。
| 打刻手段 | ジョブカン | KING OF TIME | SmartHR |
|---|---|---|---|
| Web/スマホアプリ | 対応(位置情報・写真記録等のオプションあり)。 | 対応(位置情報・端末認証と併用可能)。 | 対応(スマホ中心でシンプルな打刻運用に適合)。 |
| ICカード | 対応(ICカードリーダー連携)。 | 対応(ICカード・各種打刻端末のラインアップが豊富)。 | 対応状況は運用方式に依存。モバイル主体の構成が中心。 |
| 生体認証(指紋/指静脈/顔) | 生体認証端末と連携可能な構成あり。 | 生体認証の選択肢が広い。多拠点での厳格な本人確認に適する。 | 主にモバイル・Web打刻が中心。生体は用途により要検討。 |
| 打刻修正の申請・承認 | 修正申請→上長承認→履歴保存。監査性に配慮。 | 詳細な修正ログと承認経路の可視化に強み。 | シンプルな修正ワークフローを標準提供。 |
不正・なりすまし対策として、位置情報・端末固定・生体認証の併用や、修正申請の証跡保全を検討します。
2.1.5 承認フローとワークフロー
残業申請、休暇申請、打刻修正などの社内申請は、分岐・代理承認・多段階承認の要否を確認します。
| 項目 | ジョブカン | KING OF TIME | SmartHR |
|---|---|---|---|
| 多段承認・条件分岐 | 段階・条件を柔軟に設定可能。部署・雇用区分ごとに最適化。 | 複雑な承認経路に対応。例外処理の表現力が高い。 | わかりやすい申請体験を優先。複雑要件は簡潔に整理して運用。 |
| 代理承認/代行申請 | 対応。休暇・修正申請における現場運用を補助。 | 対応。承認者不在時の連続運用に配慮。 | 対応。人事手続と一体のワークフロー運用がしやすい。 |
| テンプレート/カスタム項目 | 申請テンプレートが豊富。項目の拡張も可能。 | 項目の詳細設定に強み。運用ルールを細かく反映。 | 標準テンプレート中心で導入をスムーズに開始。 |
属人化しがちな「例外処理」をワークフローに落とし込むことで、改ざん防止・監査対応が容易になります。
2.1.6 労務管理と入社手続きとマイナンバー
人事・労務領域(入社手続、社会保険・雇用保険、マイナンバー管理)は、勤怠と並ぶコア領域です。どこまでを単一製品でカバーするかが要点です。
| 領域 | ジョブカン | KING OF TIME | SmartHR |
|---|---|---|---|
| 入社手続・人事情報管理 | 「ジョブカン労務HR」で対応。書類回収・電子化に強い。 | 人事台帳は別システム連携が前提になりやすい。 | 人事・労務の中核機能として強力。Web入力で回収を効率化。 |
| マイナンバー管理 | 「ジョブカン労務HR」で収集・保管・権限管理に対応。 | 専用管理は想定外。連携先での管理が現実的。 | マイナンバーの回収・保管・閲覧制御に対応。 |
| 社会保険・雇用保険手続 | 「ジョブカン労務HR」で主要手続をカバー。 | 勤怠単体では非対応。連携での実現が基本。 | 人事労務の中心機能として幅広く対応。 |
労務の内製化を進める企業は「SmartHR」か「ジョブカン労務HR」を組み合わせる構成が適合します。一方、勤怠に特化し既存人事・給与と連携したい場合は「KING OF TIME」が選択肢になります。
2.1.7 電子申請と年末調整
電子申請(e-Gov連携)や年末調整は、ペーパーレス化と実務工数に直結する領域です。
| 項目 | ジョブカン | KING OF TIME | SmartHR |
|---|---|---|---|
| 電子申請(e-Gov) | 「ジョブカン労務HR」で主要手続の電子申請に対応。 | 勤怠単体では対象外。別システム連携で対応。 | 労務の中核として電子申請に対応。 |
| 年末調整 | 「ジョブカン給与計算」等と連携して対応。 | 対象外。給与システム連携で対応。 | 年末調整の申告・回収・計算プロセスをオンラインで完結。 |
年末調整は「回収(申告書)→差戻し→計算→源泉徴収票」の一連の流れをオンライン化できるか、既存の給与・会計と齟齬なく連携できるかが評価ポイントです。
2.2 連携比較
2.2.1 給与ソフト連携とCSV出力
勤怠データの給与計算への受け渡しは、月次業務のクリティカルパスです。主要給与ソフトへの対応状況とCSVのマッピング柔軟性を確認しましょう。
| 観点 | ジョブカン | KING OF TIME | SmartHR |
|---|---|---|---|
| 主要給与ソフト連携 | 弥生給与、マネーフォワード クラウド給与、freee人事労務、給与奉行、PCA などに広く対応。 | 主要給与ソフトの連携テンプレートが豊富。 | 自社給与機能に加え、外部給与ソフトとも連携可能。 |
| CSVレイアウト編集 | 出力項目・並び替え・小数処理など柔軟。 | 集計粒度・項目の細かな調整がしやすい。 | シンプルな出力設定でスムーズに接続。 |
| 勤怠→給与の照合 | 差異検知・未承認チェックの導線あり。 | 集計差異の検出やエラーハンドリングに配慮。 | 人事マスタと紐づけた整合性確認が行いやすい。 |
自社固有の手当・控除や丸め処理がある場合、CSVマッピングの柔軟性とテスト容易性を必ず検証します。
2.2.2 API連携とWebhook
データ自動連携は、人的作業の削減と二重入力の防止に有効です。提供APIの範囲とイベント通知の可否を確認しましょう。
| 観点 | ジョブカン | KING OF TIME | SmartHR |
|---|---|---|---|
| 公開APIの有無 | 公開APIあり。勤怠・労務系の主要データ連携に対応。 | 公開APIあり。勤怠データの取得・登録に対応。 | 公開APIあり。人事・労務データを中心に提供。 |
| Webhook/イベント通知 | 公式公開情報での提供範囲は要確認(運用ではスケジュール連携やAPIポーリングが一般的)。 | 公式公開情報での提供範囲は要確認(実務ではAPI連携で代替するケースが多い)。 | 公式公開情報での提供範囲は要確認(人事イベントの自動連携は連携アプリで実現可能)。 |
| iPaaS連携(例:Zapier等) | CSV/APIと併用して自動化の構築が可能。 | APIドライバ経由で連携の選択肢が広い。 | 連携アプリ・iPaaSとの相性がよく、周辺SaaSとノーコード連携を構築しやすい。 |
バッチ(スケジュール)連携かイベント駆動(Webhook)かで業務体験が大きく変わります。要件に応じた連携方式を事前に設計しておきましょう。
2.2.3 SSOとSAML
ID管理の一元化により、入退社や部署異動時のアカウント運用を簡素化できます。ゼロトラストの観点でもSSOは重要です。
| 観点 | ジョブカン | KING OF TIME | SmartHR |
|---|---|---|---|
| SAMLによるSSO | 対応プランあり。主要IdP(Google Workspace、Azure AD、Okta等)と連携可能。 | 対応プランあり。既存IdPとの連携実績が豊富。 | 対応プランあり。人事異動と権限付与の連動がしやすい。 |
| アカウントプロビジョニング | CSV/APIでの一括登録に対応。 | CSV/APIでの一括登録に対応。 | APIや人事マスタ連携で整合性を保ちやすい。 |
SSO導入時は「ロール設計」「所属・雇用区分による権限分岐」「退職時の即時無効化」を同時に設計すると安全です。
2.3 セキュリティ比較
2.3.1 ISMSとSOC2
情報セキュリティの第三者認証は、委託先管理・監査対応に有効です。取得状況は各社の公式公開情報を確認してください(認証・レポートの範囲や時期は更新されるため最新情報が重要)。
| 観点 | ジョブカン | KING OF TIME | SmartHR |
|---|---|---|---|
| ISMS(ISO/IEC 27001) | 公式公開情報の確認推奨(適用範囲・登録組織を含む)。 | 公式公開情報の確認推奨(適用範囲・登録組織を含む)。 | 公式公開情報の確認推奨(適用範囲・登録組織を含む)。 |
| SOC 2(Type 1/Type 2) | 提供有無は最新の公式情報で確認。 | 提供有無は最新の公式情報で確認。 | 提供有無は最新の公式情報で確認。 |
調達・監査の観点では「認証の有無」だけでなく、対象範囲・統制項目・監査時期・報告書の開示手順まで確認することが実務上の要点です。
2.3.2 二要素認証とIP制限
アカウント保護とアクセス制御は、人的リスクを下げるための基本的なコントロールです。
| コントロール | ジョブカン | KING OF TIME | SmartHR |
|---|---|---|---|
| 二要素認証(MFA) | 対応(プラン・設定で有効化)。 | 対応(プラン・設定で有効化)。 | 対応(プラン・設定で有効化)。 |
| IPアドレス制限 | 管理画面・打刻へのIP制限に対応(構成に依存)。 | 管理画面・打刻端末のアクセス制御に対応。 | 管理者・一般利用のアクセス制御に対応。 |
| 監査ログ・操作履歴 | 主要操作の履歴を保存。証跡出力に対応。 | 詳細な監査ログで改ざん防止・調査に有用。 | 人事・労務を横断した履歴管理で監査性を確保。 |
MFAとIP制限はSSOと併用すると効果が高まります。パスワードポリシーと合わせて標準運用に組み込みましょう。
2.3.3 データ保管とバックアップ
データの保全方針・バックアップ・エクスポートは、障害対応・災害復旧(BCP)・ベンダーロックイン回避の観点で重要です。
| 観点 | ジョブカン | KING OF TIME | SmartHR |
|---|---|---|---|
| データ保管 | 国内拠点・主要クラウド等で運用(詳細は公式情報で確認)。 | 国内拠点・主要クラウド等で運用(詳細は公式情報で確認)。 | 国内拠点・主要クラウド等で運用(詳細は公式情報で確認)。 |
| バックアップ | 定期バックアップと世代管理に対応(詳細は公開情報に準拠)。 | 定期バックアップと世代管理に対応(詳細は公開情報に準拠)。 | 定期バックアップと世代管理に対応(詳細は公開情報に準拠)。 |
| データエクスポート | CSV/TSV/Excel等で出力可能。全件出力の可否を要確認。 | CSV/TSV/Excel等で出力可能。差分出力にも配慮。 | CSV/TSV/Excel等で出力可能。API併用で移行が容易。 |
| 保持期間・削除 | 法定保存期間に沿って運用可能(詳細設定は要確認)。 | 保持方針・削除手順の設定が可能(詳細は要確認)。 | 保持方針・削除手順の設定が可能(詳細は要確認)。 |
バックアップとエクスポートの「頻度・範囲・責任分界」を明文化し、障害・退職時の対応手順まで運用設計に落とし込むことがポイントです。
3. ジョブカンとKING OF TIMEとSmartHRの違い
勤怠・労務領域で広く導入されている「ジョブカン」「KING OF TIME」「SmartHR」は、機能が一部重なりつつも、得意分野と設計思想が異なります。以下では、中核領域・注力機能・向いている企業像の観点から違いを整理し、導入と運用、サポート方針の違いまで立体的に比較します。
| サービス | 主領域 | 注力機能の例 | 向いているケース(例) | 連携の考え方 |
|---|---|---|---|---|
| ジョブカン | 勤怠管理を核に、シフト・ワークフロー・給与計算など複数モジュールを組み合わせ可能 | シフト管理、残業アラート、承認フロー、打刻修正の履歴管理など | 段階導入で機能を拡張したい、シフト運用や承認プロセスを一体で整えたい | 国内主要な給与ソフト等とのデータ連携に対応しやすい設計 |
| KING OF TIME | 勤怠管理に特化し、打刻と集計の精度・運用安定性を重視 | 多様な打刻デバイス対応、リアルタイム集計、36協定に基づくアラートなど | 現場打刻が多い多拠点・交代制の業態(店舗・製造・医療など)で打刻精度を最優先 | 勤怠データを給与ソフトに連携する前提での運用設計がしやすい |
| SmartHR | 人事労務プラットフォーム(入退社手続き、電子申請、年末調整、従業員データベースなど) | 人事・労務手続きのデジタル化、申請・承認ワークフロー、マイページ活用、勤怠機能も用意 | 人事データの一元化とペーパーレス化を推進し、従業員セルフサービスを強化したい | 人事・勤怠・給与など周辺SaaSと連携し、人事基盤として全社最適を図る |
ジョブカン公式サイト、KING OF TIME公式サイト、SmartHR公式サイトの公開情報からも、各サービスの中核領域と設計思想の違いが読み取れます。
勤怠の実務要件が複雑で打刻精度を最優先するならKING OF TIME、モジュールを段階導入してコストと機能のバランスを取りたいならジョブカン、人事労務全体のDXと従業員データの一元化を進めたいならSmartHRが有力候補です。
3.1 強みと向いている企業像
強みは「勤怠の深さ」「人事・労務の広さ」「運用の一体化」のどこに軸足を置くかで変わります。自社の課題が現場起点か、全社の人事データ起点かにより、選ぶべきプロダクトが明確になります。
3.1.1 小規模と中堅と多拠点
小規模(立ち上げ期〜少人数)では、設定負荷が低く、必要な機能から最小構成で始められる点が重要です。ジョブカンは勤怠から最小で導入し、必要に応じてシフトやワークフロー、給与計算を追加できるため、小さく始めて段階的に拡張しやすい構成です。一方、SmartHRは入退社手続きや年末調整のオンライン化など、人事労務のペーパーレス化による業務効率のインパクトが出やすく、従業員セルフサービスの浸透も図りやすい傾向があります。
中堅(拠点・部門が増えはじめる規模)では、勤怠・労務の制度が複線化しやすく、例外運用が増えます。KING OF TIMEは勤怠特化の設計で多様な打刻と就業規則へのフィットを図りやすく、残業アラートや36協定に基づく運用管理を軸に、労働時間の見える化と予防的管理を推進しやすい点が強みです。SmartHRは人事マスタを軸に各種申請と承認フローを統合し、部門をまたぐ人事・労務プロセスの標準化に向いています。
多拠点(店舗・工場・医療・介護など)では、現場での打刻のしやすさと運用安定性が肝です。KING OF TIMEは多様な打刻デバイスに対応し、現場の稼働環境に合わせた打刻方式を選びやすい構成で、現場の混在環境にも適応しやすいのが特長です。ジョブカンはシフト管理と勤怠を合わせて運用しやすく、配置と労働時間の両面からの管理に適性があります。全社で人事データを一元化したい場合は、SmartHRを人事基盤としつつ、勤怠をSmartHRの機能または他社勤怠と連携して統合運用する方針が取りやすいです。
3.2 導入期間と運用のしやすさ
ジョブカンはガイドに沿って初期設定を進めやすく、勤怠の基本運用を短期間で立ち上げやすい傾向にあります。シフト管理や承認フローなどを合わせて導入する場合でも、モジュール単位でスコープを切れるため、段階導入の計画が立てやすいのが利点です。
KING OF TIMEは就業規則と現場の打刻方式に合わせた設計を丁寧に行うほど、運用が安定します。打刻デバイスの選定・手配・設置が伴う場合はその分の手順は増えますが、いったん基盤が整うと「現場で確実に打刻され、勤怠が自動集計される」日次オペレーションに移行しやすく、例外処理が少ない運用設計を取りやすいのが特徴です。
SmartHRは人事マスタの整備と申請・承認フローの設計を起点に、入退社・各種手続き・年末調整・電子申請のプロセスを通貫でデジタル化できます。勤怠もSmartHR内で運用する場合は人事データとの親和性が高く、外部の勤怠と連携する場合でも人事基盤としての一元管理を維持しやすい構成です。従業員セルフサービス前提のUIで、現場への展開・定着を図りやすい点も評価されやすいポイントです。
「設定負荷を抑えて段階導入したい」ならジョブカン、「現場打刻の安定運用を最重視」ならKING OF TIME、「人事労務プロセスの全体最適とペーパーレス化」ならSmartHRという選び分けが実務に馴染みます。
3.3 サポート体制と導入支援
各社ともにオンラインのガイドやヘルプ・ナレッジを整備しており、標準的なオンボーディングの進め方が用意されています。ジョブカンはモジュールごとに導入順序を設計しやすく、勤怠から始めてシフトや承認フローへ広げる際も、運用を止めずに拡張しやすい支援コンテンツが揃っています。KING OF TIMEは現場の打刻方式選定と就業規則への適合を重視した設計のため、導入ガイドに沿って要件整理から設定・検証へと進むことで、安定稼働に繋げやすい体制です。SmartHRは人事データ基盤の整備と申請・承認の設計を軸に、入退社・年末調整・電子申請の運用を滞りなく進めるためのガイドが充実しており、全社展開を想定した運用設計を支援する情報が提供されています。
いずれのサービスも、ジョブカン、KING OF TIME、SmartHRの公式サイトで公開される機能情報・導入事例・運用ガイドを確認することで、自社の要件に対して過不足なくフィットするかを事前に評価しやすくなります。特に、就業規則・打刻方法・承認フロー・給与連携の4点を確認観点として整理すると、ギャップの早期発見に有効です。
4. 料金と導入費用の比較
勤怠・労務システムのコストは「月額のサブスクリプション(ID課金)+オプション機能+導入支援・運用サポート+打刻機器などの周辺費用」を合算した総保有コスト(TCO)で比較するのが実務的です。ジョブカン、KING OF TIME、SmartHRはいずれもクラウド提供で、従業員数や利用範囲、連携要件によって見積もりが変動します。ここでは、見積もり依頼や稟議の前に押さえるべき費用構造と、漏れやすい費用項目を体系的に整理します。
4.1 料金プランと標準機能とオプション
3製品はいずれも、コア機能(勤怠・シフト、労務手続、年末調整など)を中心に、追加モジュールやアドオンで拡張するプラン構成が一般的です。比較時は「標準で含まれる範囲」と「オプション扱い」を切り分け、同一要件で見積もることが重要です。
| 費用項目 | 典型的な課金単位 | 含まれる範囲(例) | 比較の要点 |
|---|---|---|---|
| 基本利用料 | テナント単位/月 | アカウント発行、基本ワークフロー、標準レポート | 最低料金や最低ID数の有無、年額一括・月次請求の選択可否 |
| ID(従業員)課金 | 1ユーザー/月 | 勤怠打刻、各種申請、従業員マスター、閲覧権限 | 休職者・アルバイト・派遣等のカウント方針、上限・下限、ボリュームディスカウント |
| 機能オプション | 機能パック/月 | シフト自動作成、工数・プロジェクト、36協定アラート、申請フォーム拡張 | 自社要件で必須化する機能が標準かオプションか、将来拡張の追加コスト |
| 電子申請・年末調整 | 機能パック/季節課金や年額 | 雇用保険・社会保険の電子申請、扶養控除申告、源泉関連 | 電子申請の利用上限、申請手数料の有無、年末繁忙期のサポート範囲 |
| API・外部連携 | APIコール数/月 or 固定 | 給与ソフト連携、Webhook、SSO(SAML/OIDC) | API利用の追加費、開発者向けサポート、監査ログの保管期間 |
| 打刻機器・端末 | 端末一式/買い切り or リース | ICカードリーダー、指紋・静脈認証、タブレットスタンド | 既存機器の再利用可否、設置・設定費、保証・交換体制 |
| サポート・保守 | 窓口/SL Aランク/月 | メール・チャット・電話、管理者向け研修、専任担当 | 対応時間(平日/夜間/休日)、初回応答SLA、エスカレーション基準 |
| 導入支援・コンサル | プロジェクト一式/初期 | 制度設計の反映、勤怠ルール整備、マスター移行、テスト | 支援の粒度(設定代行/伴走/現地研修)、見積もり単位(固定/時間) |
| 監査・ログ・保管 | 容量/月 or 年額 | 監査証跡、証憑保管、バックアップ・リストア | 保管年限、追加ストレージの単価、証跡エクスポート可否 |
ジョブカンやKING OF TIMEは勤怠・シフト領域を中心にモジュール化が進んでおり、SmartHRは人事・労務手続や年末調整を強みとしつつ勤怠は外部連携でカバーする構成が一般的です。比較の際は、勤怠と労務を単一ベンダーで統合するのか、分野ごとに最適ツールを組み合わせるのかで、費用配分と運用負荷が大きく変わります。
4.2 初期費用と月額の目安
初期費用は「設定・移行・教育」に関わる一過性コスト、月額は「ライセンス・運用・連携」に関わる継続コストです。組織規模、拠点数、就業ルールの複雑性(シフト形態、裁量労働、フレックス、36協定管理)によって増減します。
| 初期費用の内訳 | 主な内容 | 見落としやすいポイント |
|---|---|---|
| 要件定義・設計 | 就業規則・勤怠ルールのパラメータ化、承認フロー設計 | 本社/現場差異の吸収、36協定・所定外の運用例外の定義 |
| 初期設定・マスター整備 | 組織・拠点・雇用区分、カレンダー、休暇付与テーブル | 時差出勤・在宅・出張の扱い、休暇種類の増減と付与日数 |
| データ移行 | 従業員情報、残有給、勤務形態、打刻履歴(必要範囲) | データクレンジング、CSVレイアウト変換、検証サンプルの抽出 |
| 教育・トレーニング | 管理者研修、承認者・一般従業員向けガイド | 入社・異動時の教育体制、動画・マニュアルの内製可否 |
| 機器導入 | 打刻端末の手配、設置、初期設定 | 回線・電源の確保、予備機・交換手順、拠点展開のスケジュール |
月額費用は、概ね次式で概算できます。月額総費用=基本料金+(アクティブID数×ID単価)+オプション機能料+API/連携料+サポート料。このほか、年末調整や電子申請など季節・年次で変動する費用が加わるケースもあります。年契約のディスカウントや請求書払い/口座振替/クレジットカードの支払い条件は、与信や会計処理の要件と合わせて確認しましょう。
「目安」を作るには、次の手順が有効です。(1)対象範囲(勤怠のみ/勤怠+労務/年末調整含む)を固定する。(2)アクティブID(休職者や短期雇用の扱いを含む)を定義する。(3)必須オプション(36協定アラート、工数管理、ワークフロー拡張、SSOなど)を洗い出す。(4)連携対象(給与、会計、人材管理)とAPI必要有無を決める。(5)拠点数・打刻端末数を見積もる。(6)サポートランク(標準/優先/専任)を選ぶ。
4.3 トライアルと無料期間とキャンペーン
無料トライアルや無償期間は、費用対効果を見極める上で非常に有効です。ただし、実運用に近い条件で検証できなければ意思決定に誤差が生じます。トライアルでは「実データに近いサンプル」「自社の就業ルール設定」「承認フロー」「締め処理とエクスポート」まで一連の流れを確認し、導入後のギャップを最小化します。キャンペーン(初期費用割引、ID無償枠、乗り換え支援など)は適用条件(契約期間、最小ID数、申込期限)を必ず確認し、稟議文書に明記しましょう。
| 検証テーマ | 目的 | 合否基準の例 |
|---|---|---|
| 就業ルール再現性 | 残業計算、深夜・休日、代休・振休、フレックス清算 | 既存の月次結果と乖離なし、例外申請の再現可否 |
| 締め処理と連携 | 締め日運用、エクスポート、給与ソフト連携 | 締め所要時間、差分修正の容易さ、CSV/APIエラー率 |
| 利用体験 | 打刻・申請・承認の操作性、モバイル利用 | 一次回答までの操作手数、教育不要で使えるか |
| サポート品質 | 問い合わせの迅速性と解決力 | 初回応答時間、再発防止の提案有無、ドキュメント充実度 |
無償期間の開始日・終了日、課金開始条件、テナントの本番移行可否(設定の引き継ぎ)を確認しておくと、契約後の無駄な再設定や二重作業を避けられます。
4.4 乗り換えとデータ移行の費用
既存システムからの乗り換えでは、データ整備や並行稼働にコストが発生します。費用は「移行データの範囲」「品質(クレンジングの深さ)」「切替方式(一括/段階)」「拠点展開スケジュール」に比例して増減します。
| 移行対象 | ソース例 | 作業内容 | コストに影響する要因 |
|---|---|---|---|
| 従業員マスター | 人事システム、Excel台帳 | 項目マッピング、コード正規化、重複解消 | 項目数・履歴の深さ、ID体系、海外拠点の有無 |
| 勤怠設定 | 就業規則、現行システムの設定書 | 勤務形態の再定義、休暇テーブル作成 | 雇用区分の種類、拠点別ルール、例外運用の数 |
| 残有給・代休・振休 | 前システムの残高、Excel管理表 | 起算日合わせ、残高整合、検算 | 付与ルールの差異、端数処理、監査要件 |
| 打刻履歴・工数 | 前システムのエクスポート | 期間決定、データ軽量化、必要範囲の取り込み | 保管・監査方針、分析ニーズ、ファイル容量 |
| 連携設定 | 給与・会計・ID管理 | CSV/APIの項目設計、ジョブ作成、運用手順書 | API利用の有無、エラーハンドリング、監査ログ連携 |
切替タイミングは「期首」「締め日翌日」「大型連休明け」などを起点に、並行稼働と本番一斉切替のどちらを採用するかを決めます。打刻機器の再利用・買い替え、ICカードの再発行、端末設定の現地対応は、現場工数と運送費を含めて見積もると正確です。乗り換えコストは、反復運用で毎月発生する「無駄な手作業」をどれだけ削減できるかという効果(ROI)とセットで評価すると、稟議の説得力が高まります。
5. 導入事例とユースケース
ここでは、ジョブカン、KING OF TIME、SmartHRを組み合わせた導入シナリオを、業界別・働き方別に具体化します。単なる機能の羅列ではなく、現場の課題→運用設計→活用機能→効果という流れで整理し、勤怠管理と労務管理を一体で運用する実践像を示します。詳細機能は各公式サイト(ジョブカン勤怠管理、KING OF TIME、SmartHR)も参照ください。
5.1 製造と小売と医療
製造・小売・医療はいずれもシフト制や夜勤・当直、現場での打刻、多拠点運用など、勤怠の現場要件が複雑になりやすい領域です。打刻の信頼性と承認フローの整流化、36協定に基づく残業アラート、労務手続き(入社・雇用契約・社会保険・年末調整・マイナンバー)までの連続性が定着の鍵になります。
5.1.1 製造業:交代勤務・工場ラインの勤怠精度を高める
24時間稼働や変形労働時間制、深夜・早朝の交代勤務が混在する工場では、現場に適した打刻機器(ICカード、生体認証、タブレット、QR、据置端末)と耐故障性が重要です。KING OF TIMEの多様な打刻方式や、ジョブカンのシフト自動作成・36アラート、SmartHRの入社手続き・電子申請・年末調整を組み合わせることで、現場運用と本社の労務業務を分断なくつなげられます。
| ユースケース | 主な課題 | 活用機能(例) | 運用ポイント | 期待できる効果 |
|---|---|---|---|---|
| 交代勤務の勤怠自動集計 | 深夜・早朝帯や長時間シフトの割増計算、乖離の発見が遅れる | ジョブカン:シフト作成、36協定上限アラート/KING OF TIME:日次・月次自動集計、乖離アラート/SmartHR:従業員マスタ一元化 | 勤務パターン・休日区分・割増ルールをマスタ化し、現場変更はワークフロー承認で統制 | 締め作業の短縮、割増計算の標準化、法令順守の向上 |
| 現場打刻の標準化 | 共有端末での代理打刻や打刻漏れ、入退場の突合作業が重い | KING OF TIME:IC/生体認証打刻、打刻修正申請/ジョブカン:モバイル打刻(GPS付与)/SmartHR:権限・ロール設計 | 生体やICによる本人性の高い打刻を基本にし、打刻修正は申請・承認で履歴を保持 | 不正・誤りの抑止、監査対応の容易化、実労働時間の可視化 |
| 給与連携の誤差削減 | 人事労務・勤怠・給与のマスタ不整合、CSV加工の属人化 | ジョブカン/KING OF TIME:給与ソフト用CSV出力・API/SmartHR:人事情報のシステム間連携 | 従業員ID・雇用区分・手当控除コードを統一。月次締め前に乖離チェックを自動通知 | 転記ミスの削減、締め処理のリードタイム短縮 |
セキュリティ面では、二要素認証・IP制限・監査ログを有効化し、工場内ネットワークからのアクセスに限定するなどのポリシー設定が有効です。
5.1.2 小売業:多店舗・短時間シフトとヘルプ勤務の整合性を担保
店舗ごとに営業時間や繁閑が異なり、パート・アルバイトの短時間勤務、店舗間のヘルプ出勤、在庫やレジ締めとの兼ね合いで、シフトと勤怠の乖離が生まれやすい領域です。スマホでのシフト希望収集・公開、位置情報付きモバイル打刻、兼務・異動の管理、店舗別原価の集計がポイントになります。
| ユースケース | 主な課題 | 活用機能(例) | 運用ポイント | 期待できる効果 |
|---|---|---|---|---|
| 多店舗のシフト最適化 | 各店で個別作成され品質が不均一、ヘルプ手配に遅延 | ジョブカン:シフト自動作成・公開、兼務設定/KING OF TIME:店舗別集計・拠点マスタ/SmartHR:配属・異動履歴の一元管理 | 店舗マスタと人員スキルを紐付け、店長承認→エリアMgr承認の二段階で統制 | シフト作成時間の削減、売場に応じた人員最適化 |
| ヘルプ勤務の精算 | 応援先店舗での打刻と本店の賃金計上が一致しない | ジョブカン/KING OF TIME:拠点横断打刻、プロジェクト/部門別工数集計 | ヘルプ先を選択して打刻。締め時に部門振替の承認ワークフローで整合 | 部門別人件費の可視化、締め後修正の減少 |
| 短時間・有給付与の管理 | 雇用区分ごとの所定・付与ルールが複雑 | ジョブカン/KING OF TIME:所定労働時間・有給付与ルール設定、残数可視化/SmartHR:雇用契約・就業条件の電子化 | 雇用区分ごとにルールテンプレート化し、入社手続き時に自動付与設定 | 申請・承認の迅速化、休暇消化率の改善 |
不正防止や労働時間の適正化のため、GPS付きモバイル打刻や、SSO/SAMLでの認証統合、Webhookによる通知(例:残業アラートのチャット通知)を活用します。
5.1.3 医療機関:夜勤・当直・オンコールの勤怠と労務の一体管理
病院・クリニックでは、日勤・準夜・深夜の三交代や当直、オンコール・呼出し対応など、複雑な勤務実態を正しく集計しつつ、法令順守と安全な情報管理が求められます。SmartHRで入退社や雇用契約・社会保険の電子申請、年末調整・マイナンバー管理を行い、勤怠はジョブカンまたはKING OF TIMEでシフト・打刻・残業アラートを担う構成が定着しやすいです。
| ユースケース | 主な課題 | 活用機能(例) | 運用ポイント | 期待できる効果 |
|---|---|---|---|---|
| 三交代・当直の集計 | 夜間帯の割増、当直明けの休息、勤務区分の乖離 | ジョブカン/KING OF TIME:勤務パターン設定、深夜割増、自動休憩、乖離アラート | シフト確定フローと日次承認を徹底し、修正履歴を監査対応できる形で保持 | 手計算の脱却、現場負荷の軽減、透明性の確保 |
| オンコール・呼出し | 待機時間と出動時間の区分、支給のルール化 | ジョブカン/KING OF TIME:勤務区分・手当設定、モバイル打刻、打刻修正申請 | 待機・出動の切替を区分選択で打刻。支給ルールはマスタで統一管理 | 支給の公平性、申請・承認の迅速化 |
| 労務手続きの電子化 | 紙ベースの入社・各種届出、年末繁忙による滞留 | SmartHR:入社手続き、雇用契約の電子化、社会保険の電子申請、年末調整、マイナンバー管理 | 人事台帳をマスタにして勤怠と連携、権限・IP制限・二要素認証を有効化 | 配布・回収・入力の工数削減、情報セキュリティの向上 |
取り扱う個人情報が多いため、アクセス権限の粒度・二要素認証・IP制限・バックアップ・監査ログまでを含めたポリシー設計が不可欠です。
5.2 リモートワークとフレックス
オフィス外の働き方では、打刻・承認・労働時間管理に加えて、本人確認と場所・環境の担保、情報セキュリティの基準が重要です。フレックスタイム制では、コアタイムや清算期間、みなし時間の扱いなど就業規則と勤怠システム設定の整合をとります。
5.2.1 リモートワーク(在宅・モバイルワーク)
Web/モバイル打刻と、在宅勤務申請・日報・残業申請のワークフローを一本化します。SSO/SAMLによる認証統合や二要素認証、IP制限(例:会社指定ネットワーク/VPN経由)を有効化し、在宅時のセキュリティを担保します。PCログオンと出退勤を連携できる製品もあるため、業務実態に応じて選定します。
| ユースケース | 主な課題 | 活用機能(例) | 運用ポイント | 期待できる効果 |
|---|---|---|---|---|
| 在宅勤務の出退勤 | 本人確認と位置情報、打刻忘れ | ジョブカン/KING OF TIME:Web/モバイル打刻、GPS付与、打刻忘れアラート/SSO・二要素認証 | 在宅勤務申請→承認→当日の打刻・日報提出→日次承認の運用を標準化 | 不正抑止、打刻精度の改善、労働時間の見える化 |
| コミュニケーション連携 | 在宅での情報断絶、アラート見落とし | Webhook通知(残業超過・乖離アラート)、API連携 | チームチャンネルへ自動通知。管理者はダッシュボードで横断監視 | 対応遅延の防止、マネジメントの一体化 |
| 労務のデジタル手続き | 紙の押印・郵送、回収漏れ | SmartHR:雇用契約の電子化、各種届出のオンライン化、年末調整 | 自宅デバイスからセルフサービスで手続きを完了、本人確認を厳格化 | リードタイム短縮、回収率向上、保管コスト削減 |
在宅勤務では「打刻の本人性」「承認の証跡」「セキュアアクセス」の三点セットを崩さない設計が、監査・セキュリティ両面の要件を満たします。
5.2.2 フレックスタイム制(コアタイムあり・なし)
フレックス運用は、就業規則と勤怠ルールの整合が肝要です。コアタイム・フレキシブルタイム、清算期間(通常は1か月)の設定、遅刻早退・有給・振替休日・代休の扱い、みなし労働の定義を明確にし、勤怠システムへ正確に反映します。ジョブカンやKING OF TIMEの勤怠ルール設定・アラート・ワークフローで統制を行い、SmartHRで就業条件通知書・雇用契約を電子化します。
| ユースケース | 主な課題 | 活用機能(例) | 運用ポイント | 期待できる効果 |
|---|---|---|---|---|
| コアタイムありフレックス | コア帯不在・所定不足の検知が遅い | ジョブカン/KING OF TIME:コアタイム設定、清算期間内の不足/超過アラート、月次承認 | 日次・週次での不足見込みを可視化し、本人・上長へ自動通知 | 清算期末の駆け込み是正、労働時間の平準化 |
| コアタイムなしフレックス | 会議・連携の同期と、過重労働の早期検知 | ジョブカン/KING OF TIME:フレキシブルタイム設定、残業・深夜のアラート/Webhook通知 | チーム規約で標準コア帯を定義し、アラートはチャネルに通知 | 生産性と働きやすさの両立、36協定順守の徹底 |
| 就業条件と労務文書 | 規程周知・更新の抜け漏れ、紙文書の管理 | SmartHR:就業条件通知書・規程の配布・同意、従業員マスタ | 更新時は対象者へ自動配布・合意取得、履歴と証跡を保存 | コンプライアンス強化、監査対応の効率化 |
フレックスでは「清算期間の超過・不足アラート」「遅刻早退・私用外出の扱い」「振替・代休の消化ルール」を明文化し、勤怠の自動集計とワークフローで確実に運用します。これにより、過不足の平準化と管理部門の負担軽減が両立できます。
6. 選び方チェックリスト
本章では、勤怠・労務システム(例:ジョブカン、KING OF TIME、SmartHR)を選定する際に、要件定義から運用開始までの判断ポイントを網羅したチェックリストを示します。業務要件・法令対応・セキュリティ・連携・コスト(TCO)を同一フレームで評価し、RFP(提案依頼書)に落とし込んで比較することで、ベンダー間の差異が可視化され、導入後の手戻りを防げます。電子申請の要否はe-Gov(電子申請)の利用有無、個人情報の取り扱いは個人情報保護委員会のガイドライン準拠を基準に確認しましょう。
6.1 重要要件と優先順位
「業務要件 → 非機能要件(セキュリティ・可用性) → コスト」の順で優先順位を付与し、Must/Should/Could/Won’tのマトリクスに分類します。RFPにはスコープ境界、制約、評価基準、検収条件を明記し、機能要件はテスト観点(受け入れ条件)として表現するのが実務上有効です。
6.1.1 RFPと要件定義の準備
初期段階でRFPの章立てを決め、現行業務(As-Is)と目標業務(To-Be)の差分を明らかにします。とくに就業規則・36協定の運用、打刻環境、給与連携の現状を定量化しましょう。
| RFP要素 | 目的 | 記入のヒント(受け入れ条件) |
|---|---|---|
| スコープと対象範囲 | 対象機能・対象部門・拠点・雇用区分を定義 | 全社/一部門、正社員/アルバイト/派遣、国内/海外拠点などを列挙 |
| 業務要件 | 勤怠・労務の必須機能を明確化 | フレックス・変形労働・シフト・休暇規定・残業アラートのロジックを記述 |
| 非機能要件 | セキュリティ・可用性・拡張性の下限値を設定 | 二要素認証、IP制限、監査ログ保持期間、稼働率の目標値を明記 |
| 連携要件 | 給与・人事・ID基盤との連携方式を定義 | CSV/固定長、API/Webhook、SSO(SAML/OIDC)、SCIMの要否を指定 |
| 評価基準と重み | ベンダー比較の採点基準を統一 | 機能40%・非機能30%・コスト20%・サポート10%など重み付け |
| 検収条件 | 合否判定を客観化 | UATでのテストケース合格率、主要KPIの達成条件を設定 |
6.1.2 法令対応とコンプライアンス
労働基準法、36協定、割増賃金、労働時間管理、有給付与の計算ロジックが就業規則に一致するかを確認します。各種届出はe-Govによる電子申請の運用も検討し、社会保険手続・年末調整の電子化可否、マイナンバー取扱いの安全管理措置を評価対象に含めます。
| 項目 | チェックポイント | 確認方法 |
|---|---|---|
| 36協定と時間外上限 | 上限アラート、特別条項、集計単位(月/年)に対応 | テストデータで月45時間超/年360時間超の警告動作を確認 |
| 割増賃金 | 深夜、休日、所定外/法定外の区分と率の設定 | 計算書式と給与明細出力の突合 |
| 年休付与・管理 | 比例付与、計画付与、時季指定・時季変更手続の再現 | 付与スケジュール・残数推移の検証 |
| マイナンバー | 収集・保管・アクセス制御・廃棄の統制 | 取扱規程・暗号化方式・アクセスログの実機確認 |
| 個人情報保護 | 匿名化/仮名化、目的外利用の防止、第三者提供の管理 | 個人情報保護委員会の指針との整合性レビュー |
6.1.3 機能要件(勤怠・労務)
打刻・集計・申請・承認・労務手続の一連の流れが自社の勤務形態に適合するかを実データで検証します。モバイル打刻や位置情報、オフライン時の保全も確認します。
| 機能領域 | 詳細 | 受け入れ条件(例) |
|---|---|---|
| 打刻・デバイス | ICカード、生体認証、タブレット、スマホ(GPS/ジオフェンス) | 多拠点での同時打刻耐性、不正打刻防止(自己申告の例外承認) |
| シフト・勤務パターン | 固定/交代/フレックス/裁量/変形労働制 | 就業規則の全パターンをシステム上で表現・自動集計可能 |
| 休暇・代休・時間単位年休 | 付与・取得・残数管理、時間休・半休 | 月次締め時の自動繰越・控除計算の正確性 |
| 残業管理・アラート | 36協定アラート、過重労働兆候の通知 | 閾値・頻度・通知先(本人/上長/人事)の柔軟設定 |
| 労務手続 | 入退社・各種変更、雇用契約、電子申請 | 帳票自動生成とe-Gov連携での申請可(対象手続の網羅) |
| 年末調整 | 控除申告オンライン収集、チェック、給与ソフト連携 | 証憑アップロード、差戻し、エラー一括解消機能 |
6.1.4 連携要件(給与・人事・SSO・API)
給与・人事・会計とのデータ連携は、CSV定義の固定化とAPIの有無で保守性が大きく変わります。SSO(SAML/OIDC)やSCIMでのプロビジョニング対応、Webhookのイベント設計も評価対象に入れます。
| 連携対象 | 方式 | API/Webhook | 確認ポイント |
|---|---|---|---|
| 給与(弥生給与/給与奉行/freee人事労務/マネーフォワードクラウド給与 等) | CSV/固定長/API | 勤怠集計→給与計算の自動連携可否 | 小数処理、丸め規則、コード体系のマッピング手順 |
| 人事マスタ | 双方向/片方向 | 従業員ライフサイクルAPI | 異動・兼務・所属改編の履歴管理 |
| SSO/ID基盤 | SAML/OIDC、SCIM | 対応有(JIT/定期同期) | Azure AD/Google Workspace等での認証試験 |
| 通知・ワークフロー | メール/チャット | Webhook/イベント | Slack/Teams連携、承認期限の自動催促 |
6.1.5 非機能要件(セキュリティ・可用性・データ保護)
ISMS(ISO/IEC 27001)やSOC2報告書の有無、二要素認証、IP制限、監査証跡、バックアップ/DR、データ保管地域(国内/国外)を確認します。パスワード方針や端末紛失時のリスク低減策なども評価対象です。
| 要件 | 最低基準の目安 | 確認方法 |
|---|---|---|
| 認証・認可 | 二要素認証、権限ロール、IP制限 | 環境設定画面での実機確認、ログイン試験 |
| 監査ログ | 誰が・いつ・何を、改ざん防止と検索性 | 出力サンプルで保持項目・保存期間を確認 |
| 稼働/復旧 | 可用性設計、バックアップと復元テスト | 障害時手順書、DR演習の実績提示 |
| データ保護 | 暗号化(転送/保存)、国内保管の可否 | 技術仕様・第三者監査報告の提示 |
6.1.6 コストとTCO(総保有コスト)
月額・初期費用だけでなく、打刻機器、導入支援、移行、教育、運用保守の内部人件費まで算入します。契約更新条件やユーザー課金のカウント方法(アクティブ/登録数)も確認が必要です。
| コスト要素 | 内訳 | 見落としやすいポイント |
|---|---|---|
| ライセンス | 基本/オプション、ユーザー単価 | 最低利用人数、年契約の解約条件、段階課金 |
| 機器・環境 | ICカードリーダー、生体認証、タブレット | 保守費、予備機、設置工事、拠点増加時の増設 |
| 導入支援 | 設計、設定、トレーニング | 就業規則の個別ロジック設定の追加費用 |
| データ移行 | マスタ/履歴/残数移行 | クレンジング工数、移行試験の追加費 |
| 運用保守 | サポート、アップデート、監査対応 | 年度更新(年末調整/法改正)に伴う追加対応 |
6.1.7 優先度マトリクスでの整理
Must(必須)は代替不可、Shouldは運用で補完可能、Couldは余裕時に検討、Won’tはスコープ外として合意します。これに重み付けを掛け合わせ、ベンダー評価の一貫性を担保します。
| 優先度 | 定義 | 例 |
|---|---|---|
| Must | 欠落すると導入不可 | 36協定アラート、二要素認証、給与CSVレイアウト適合 |
| Should | 運用/回避策で一時対応可 | 多言語UI、オフライン打刻の自動同期 |
| Could | あると望ましい | Webhook連携、チャット通知の細粒度設定 |
| Won’t | 今回対象外 | 海外拠点展開(次フェーズ)、BIダッシュボード高度化 |
6.2 社内体制と運用フロー
選定から本番運用までの責任分担、承認権限、データ移行、教育、監査対応までをプロジェクト計画に組み込みます。「誰が・いつ・何を・どの基準で完了とするか」をRACIで明示し、運用フローとKPIを設定すると定着が進みます。
6.2.1 プロジェクト体制と責任分担(RACI)
関係者(経営スポンサー、人事・労務、情報システム、給与、各拠点管理者、監査・内部統制、ベンダー)の役割を明確にします。
| タスク | 責任者(R) | 承認者(A) | 協力(C) | 報告先(I) |
|---|---|---|---|---|
| 就業規則の要件化 | 人事・労務 | 経営/人事責任者 | 現場管理者/給与 | 内部監査 |
| セキュリティ要件定義 | 情報システム | CISO/情報セキュリティ責任者 | ベンダーSE | 内部監査 |
| 連携設計(給与/SSO) | 情報システム | 人事責任者 | 給与/ベンダー | 関係部門 |
| 移行とUAT | 人事・労務 | プロジェクトオーナー | 情報システム/拠点管理者 | 経営 |
| 本番展開と定着化 | 人事・労務 | 経営/人事責任者 | 情報システム/ベンダーCS | 全社 |
6.2.2 権限設計とアクセス制御
最小権限の原則で、一般従業員・承認者・人事・給与・監査のロールを設計します。IP制限や二要素認証の適用範囲、拠点/部門階層の閲覧制御もあわせて定義します。
| 項目 | ベストプラクティス | 確認ポイント |
|---|---|---|
| ロールと権限 | 職務ベースのロール、例外は期間限定 | 監査ログでの権限変更履歴の追跡性 |
| 認証強化 | 二要素必須、SSOで統合 | 外部ID基盤との連携試験(SAML/OIDC) |
| アクセス制限 | IP/端末制限、国外アクセス制御 | 出張・リモート時の例外運用手順 |
6.2.3 承認フローと運用プロセス
残業申請、休暇申請、打刻修正、シフト確定、月次締めの各プロセスに承認者・期限・差戻し・代理承認のルールを定義します。チャット通知や自動催促で滞留防止を図ります。
| プロセス | 関与者 | 完了基準 |
|---|---|---|
| 残業申請 | 申請者/上長/人事 | 事前申請・事後承認の基準を明文化、アラート解消 |
| 休暇申請 | 申請者/上長/代替要員調整 | 人員充足の確認、残数自動更新 |
| 打刻修正 | 申請者/上長/人事 | 証跡添付、二段階承認の可否を決定 |
| 月次締め | 現場管理者/人事/給与 | 未承認0、エラー0、給与連携ファイル検証済み |
6.2.4 データ移行と検証
従業員マスタ、組織・役職、勤怠履歴(必要範囲)、休暇残数、36協定設定を対象に、クレンジング→試行移行→UAT→本番移行の順で実施します。移行後にダブルチェックのためリハーサルを行います。
| 対象データ | 前処理 | 検証観点 |
|---|---|---|
| 従業員マスタ | 社員番号重複排除、在籍区分統一 | 件数一致、必須項目の欠損なし |
| 組織・権限 | 階層コードの正規化 | 閲覧範囲・承認経路の再現 |
| 休暇残数 | 残数の締日時点化 | 前システム・紙台帳との一致 |
| 勤怠履歴 | 移行期間の定義(必要最小限) | 集計結果と給与控除/支給の突合 |
6.2.5 教育・定着化(チェンジマネジメント)
管理者・承認者・一般従業員向けに役割別マニュアルと動画チュートリアルを用意し、問い合わせチャネルを一本化します。FAQを継続更新し、未承認申請の可視化で行動変容を促します。
| 対象 | 教育内容 | 成果指標 |
|---|---|---|
| 管理者 | 権限・承認・エラー解消手順 | 月次締め遅延件数の減少 |
| 承認者 | 差戻し基準、代理承認、期限管理 | 承認リードタイムの短縮 |
| 従業員 | 打刻・申請・モバイル利用 | 打刻漏れ/申請差戻し率の低下 |
6.2.6 運用監視・監査・改善
監査証跡の定期レビュー、アクセス権限の棚卸し、アラート閾値の見直しを月次で実施します。機能アップデートは検証環境で先行確認し、リリースノートに基づき影響評価を行います。
| 領域 | 運用ルール | 記録/証跡 |
|---|---|---|
| 権限棚卸し | 人事異動時・定期で見直し | 変更申請/承認ログ、比較レポート |
| 監査ログ | 検索・保全・エクスポート | 保持期間と改ざん対策の確認 |
| インシデント | 検知→封じ込め→根本原因分析 | チケット管理と是正対応記録 |
6.2.7 リスク管理とBCP(事業継続)
障害・災害・通信断・機器故障に備え、オフライン打刻手順、代替運用(紙/CSV)、復旧判定の基準を定義します。バックアップの取得頻度とリストア手順も訓練しておきます。
| リスク | 対策 | テスト/演習 |
|---|---|---|
| システム障害 | DR設計、連絡網、影響範囲特定 | 年次の復旧手順リハーサル |
| 通信断/拠点障害 | オフライン打刻、後日同期 | 模擬停止での代替運用訓練 |
| 機器故障 | 予備機・SLA・保守契約 | 交換手順と復旧時間の検証 |
上記チェックリストを用い、Must条件を満たす候補のみを最終比較に残し、RFPの評価基準に沿ってベンダーの実機デモとUATで合否判定を行うことで、導入後の運用負荷とリスクを最小化できます。
7. よくある質問
7.1 打刻機器の選び方
勤怠・労務システムの導入時に最も質問が多いのが「どの打刻方式・機器を選べばよいか」です。現場の運用(固定拠点/多拠点/外勤)、通信環境、本人確認の厳格さ、導入コストと保守コスト、将来の拡張性を総合的に評価して選定すると失敗が少なくなります。まずは主な打刻方式ごとの特徴を俯瞰しましょう。
| 方式 | 使用機器 | 強み | 留意点 | 主な利用シーン |
|---|---|---|---|---|
| ICカード打刻 | ICカード(例:社員証、交通系IC)、ICカードリーダー | 素早い打刻、非接触で故障が少ない、共有端末で運用しやすい | カード貸し借り対策が必要、カード発行・紛失対応の運用が発生 | 店舗・工場・コールセンターなど出入口に設置 |
| 生体認証(指静脈・指紋・顔) | 生体認証端末、カメラセンサー | なりすまし対策に有効、カード管理が不要 | 初期登録の手間、衛生面の配慮、マスク・手袋・照度の影響に要注意 | セキュリティ重視の多拠点、無人拠点 |
| QRコード/バーコード | タブレット・スマートフォンのカメラ、QRコード表示/印刷 | 低コストで導入しやすい、臨時拠点でも運用可能 | コードの複製対策(ワンタイム・端末紐づけ等)の検討が必要 | イベント・短期プロジェクト・臨時売場 |
| モバイル打刻(アプリ/ブラウザ) | 従業員のスマートフォン、位置情報/カメラ | 外勤・直行直帰に最適、GPSや写真でエビデンスを残せる | 私用端末の取り扱い(BYOD)やMDM、位置情報のプライバシー配慮 | 営業・保守・訪問介護などフィールドワーク |
| PC打刻(社内端末) | デスクトップPC、打刻用Web画面/アプリ | デスクワーカーに自然、SSOやIP制限と相性が良い | 共用PCの本人性担保、リモート時の運用ルール整備 | 本社・オフィスの事務部門、在宅勤務 |
| 据置型タイムレコーダー | 専用端末(レシート/サーマルプリンタ搭載など) | 電源投入ですぐ使える、打刻専用で誤操作が少ない | 機器の初期費用・保守、設置場所の電源・通信確保 | 工場・医療・教育現場など機器の堅牢性が必要な職場 |
なりすましや代理打刻のリスクを最小化したい場合は、位置情報・端末固定(端末ID)・カメラ撮影・生体認証・ネットワーク(IP/SSO)など複数のエビデンスを組み合わせる「多層防御」を検討してください。逆に、回転率が高い店舗や短期雇用が中心なら、入退職や端末準備の負担を抑えられる方式を優先するのが現実的です。
| 選定観点 | 確認ポイント | 失敗を避けるコツ |
|---|---|---|
| 本人確認レベル | 生体・写真・端末固定・位置情報・ネットワーク制約の有無 | 複数手段の併用可否と、現場の運用負担を合わせて評価 |
| 設置・通信 | 電源(AC/PoE)、Wi‑Fi/有線、電波状況、オフライン時の補正 | 停電・通信断の迂回策(ローカル保存、後追い修正フロー)を用意 |
| 多拠点・多人数 | 端末の一括設定、拠点追加の容易さ、スケーリング方法 | キッティング標準化、予備機の在庫計画、ヘルプデスク導線 |
| TCO(総保有コスト) | 初期費用、月額、機器保守、紛失・故障時の代替コスト | 3〜5年の償却で比較、消耗品やカード再発行費も含め試算 |
| セキュリティとプライバシー | 位置情報・写真の取得範囲、保存・閲覧権限、持出端末の管理 | 就業規則・同意取得・教育で運用ルールを明文化 |
| 現場UX | 打刻のスピード、待ち行列、打刻忘れ防止、修正申請の容易さ | ピーク時に並ばない動線設計、ポップアップやリマインド活用 |
据置端末を導入する場合は、設置位置(入退出動線と視認性)、耐環境性(粉塵・温湿度)、盗難防止、ファームウェア更新手順、ログのオフライン保管と同期方式、清掃・衛生管理(生体認証)を事前に確認しておきましょう。モバイル打刻では、MDMの適用可否、アプリの自動更新、機種変更時のプロセス、位置情報の精度と取得タイミング(出退勤時のみ等)を定義すると運用トラブルが減ります。
「不正を防げること」だけでなく「現場が運用し続けられること」を両立する設計が、導入後の生産性とデータ品質(労働時間の適正把握)を左右します。
7.2 多言語対応と海外拠点
グローバル人材や外国籍スタッフの比率が高い職場では、勤怠画面・申請フォーム・通知メール・ヘルプの多言語対応が重要です。海外拠点を含む場合は、タイムゾーン・サマータイム・現地祝日カレンダー・ローカライズされた日付/数値/氏名表記、法定労働時間の扱い、組織の並列管理(現地法人ごとの就業ルール)も合わせて設計します。
| 項目 | 確認ポイント | 運用上の注意 |
|---|---|---|
| UI言語と入力 | 日本語・英語を含む複数言語切替、氏名の表記順、通称名対応 | 本人向け通知文(日本語/英語)のテンプレート整備 |
| 就業カレンダー | 国/地域ごとの祝日、サマータイムの自動反映 | 越境チームの会計締め・締日ズレの影響を事前に定義 |
| タイムゾーン | ユーザー/拠点単位のタイムゾーン設定 | 出張・一時滞在の扱い(打刻基準)をルール化 |
| 法令差分 | 残業上限・休憩・休日規定など就業ルールの分岐 | 日本拠点と海外拠点の承認フローを分けて管理 |
| ドキュメント | 就業規則・申請マニュアルの多言語化 | 最新版の一元管理と告知(ポリシー改定時の周知) |
| アクセス制御 | 国別IP制限、VPN経由のアクセス許可 | 海外出張者・在宅勤務の例外フローを用意 |
| サポート | ヘルプデスクの対応言語・受付時間帯 | 一次対応スクリプトの多言語化、FAQの整備 |
| データ保管 | データの保管リージョン、バックアップの所在 | 社内規程・契約での越境移転の取扱い明確化 |
海外からのアクセスやデータ連携がある場合は、社内の情報セキュリティポリシーに基づき、IP制限・多要素認証・SSOを組み合わせたアクセス管理を実施してください。個人データの越境移転に関しては、適用される法令・契約に従った通知・同意・安全管理措置の整備が求められるため、法務・情報セキュリティ・人事の三者で事前に方針を統一しておくと実装と監査がスムーズです。
7.3 セキュリティ監査と証跡
監査対応では、誰が・いつ・どこから・何をしたかを追跡できる「監査証跡(オーディットトレイル)」が重要です。勤怠・労務システムでは、打刻記録そのものに加えて、申請/承認、データ修正、権限変更、設定変更、エクスポート/API利用などの操作ログを網羅的に取得・保全し、必要に応じて検索・出力できることが求められます。
| ログ種別 | 最低限の内容 | 監査で見られやすいポイント |
|---|---|---|
| 打刻ログ | 日時、打刻種別(出勤/退勤等)、打刻手段、端末/ブラウザ情報、位置情報(取得時) | 打刻修正の履歴と理由、承認者、変更前後差分の可視化 |
| 申請/承認ログ | 申請内容、申請者、承認者、承認経路、タイムスタンプ | 差戻し・再申請の記録、経路変更の根拠 |
| ユーザー/権限 | 作成/無効化、ロール付与・剥奪、最終ログイン | 管理権限の職務分掌、退職者の速やかな無効化 |
| 設定変更 | 就業ルール・締日・丸め・残業アラート等の変更履歴 | 変更の承認プロセス、テスト/本番の切替記録 |
| データ出力 | CSV/PDF/APIの出力者、対象範囲、実行元IP、実行結果 | 大量出力の検知、二次配布の管理(保管場所/暗号化) |
| 認証/アクセス | 成功/失敗、MFA有無、SSO連携、IP/端末情報 | 不審な試行のアラート、休眠アカウントの棚卸し |
証跡の保全では、改ざん耐性(ハッシュ、署名、WORMストレージ等の手段の検討)、アクセス権限の分離(運用者と監査閲覧者の分離)、保持期間と廃棄ルール(バックアップを含む)の明確化がポイントです。監査対応にあたっては、「どのログを、どの期間、どの形式で、誰が、どの権限で、どのように提示するか」をあらかじめ文書化し、定期的にリハーサル(エビデンス収集の演習)を行うと本番での対応品質が大きく向上します。
| 監査対応チェックリスト | 確認ポイント |
|---|---|
| ログの検索性と出力 | 期間・ユーザー・拠点でのフィルタ、CSV/PDF/JSONの出力可否 |
| 保持と保全 | 保持期間の設定、バックアップ、改ざん検知/防止、削除申請の統制 |
| アクセス管理 | 二要素認証、IP制限、SSO(SAML/OIDC)、権限ロールの最小化 |
| 設定変更の統制 | 申請・承認ワークフロー、変更履歴の自動取得、職務分掌 |
| エクスポート統制 | 大量出力の承認、暗号化、保存先の指定、持出し防止策 |
| インシデント対応 | 検知〜封じ込め〜復旧〜再発防止の手順、連絡体制、証跡確保 |
| 監査用ビュー | 監査閲覧者用の参照専用権限、ダッシュボード、レポート雛形 |
内部統制(J-SOX)や情報セキュリティ監査においては、IT全般統制(認証・権限・変更管理・バックアップ)と業務処理統制(申請/承認の妥当性)が共に確認されます。システムだけでなく、就業規則・権限付与基準・退職者アカウント停止のSLA・教育記録など周辺の運用ドキュメントも合わせて準備しておくと、審査がスムーズに進みます。
8. まとめ
本記事では、勤怠・労務の主要機能から連携・セキュリティ・費用までを同一条件で整理し、企業規模や運用フローを踏まえた選定基準を明確化した。比較の前提をそろえることで、見積金額や機能名だけに左右されない判断が可能になる。重要なのは「自社が解決したい業務課題」と「運用で維持できる仕組み」を起点に、必要十分な機能に絞って評価することだ。
結論として、目的別に最適解は分かれる。ジョブカンはモジュール構成で段階導入しやすく、シフト管理やワークフローまで含めた一気通貫運用を費用対効果良く構築しやすい。KING OF TIMEは打刻手段の選択肢と集計ロジックの柔軟さが特徴で、多拠点・店舗や雇用形態が多様な環境での勤怠精度を高めやすい。SmartHRは入社手続きや雇用契約、各種届出、年末調整などの労務業務をクラウドで標準化し、人事情報の一元化を起点に全社での活用を広げやすい。
選定の軸は、必須機能の合致度、締め処理の時間短縮効果、既存システムとの連携、セキュリティ要件への適合、運用負荷とサポート体制の5点に集約できる。特に、勤怠・労務・給与のデータ連携で二重入力をなくす設計は、月次での手戻りとミスを大きく削減する。CSVやAPI、SSOの活用可否は早期に確認したい。
費用は従業員数と利用機能で変動し、打刻機器や導入支援の有無も影響する。初期は要件定義とマスター整備に時間を投下するほど、稼働後の修正コストを抑えられる。無料トライアルやデモを活用し、実データで締め処理まで通しで検証することが、見積上の差額以上の効果検証につながる。
セキュリティは、ISMS(ISO/IEC 27001)の取得状況、二要素認証やIP制限の有無、バックアップと復旧手順、操作ログの粒度と保存期間を必ず確認し、自社の監査要件やテレワーク運用に適合させる。SSOやSAMLへの対応範囲も、アカウント管理の効率とリスク低減に直結する。
導入成功の鍵は、就業規則と実運用の差異を洗い出し、承認フローと打刻修正のルールを明文化してから設定に落とすことにある。テストは締め処理・休暇付与・36協定関連のアラートまで含めて月次サイクルで回し、現場教育とヘルプデスクの問い合わせ動線をセットで設計する。サポート窓口の品質や回答SLA、アップデートの告知体制も事前に確認しておくと安心だ。
そのうえで、段階導入(例:勤怠から開始し、労務へ拡張)やパイロット導入を挟むと、移行リスクを抑えられる。成果指標は「打刻修正件数の減少」「締め処理時間の短縮」「申請・承認のリードタイム改善」といった運用KPIで可視化し、定期的に設定と教育を更新する。
総じて、勤怠の複雑性と現場運用を重視するならKING OF TIME、費用対効果と段階導入のしやすさを重視するならジョブカン、労務プロセスの電子化と人事データ活用を軸にするならSmartHRが選択肢になる。最終判断は、優先要件の重みづけと実機検証の結果に基づき、社内体制と予算に照らして行うのが再現性の高い結論である。
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